側近

ショートショート

私の特技は、会話だ。
何も、特別なことは言っていない。

自分の意見を挟まず、相手が答えを導けるよう、会話で誘導する。

結果、私はトップの人物の側近に置かれ、大切な財産も任されるようになった。

現場で働き、その地位を狙っていた人には、私の存在は疎ましく感じるだろう。
でも、トップが隣に置きたいのは、能力のある人物ではない。
自分を写す「鏡」のような存在が欲しいのだ。

私の立場に変わりたい人が、私のそばに寄ってくる。
でも、私の特技は会話だ。
「そうですよね、本来の功労者はあなたです」
「あなたあってのプロジェクトです」
と、相手の気持ちに共感し、その人の能力を労う。
そうすると、相手は戦意を喪失し、むしろ私のファンになってくれるのだ。

私は今日もあくせく働く人を横目に、トップの隣で
「ですよね」
「あなたの本心は?」
と、鏡の存在に徹している。

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