鶴の恩返し

ショートショート

「私が機を織っている時は、決して戸を開けないでください」

女はそういって、機織りの部屋に入っていった。

男は、女が鶴であることに、とうに気づいていた。
鶴の所作が、食事の仕方や生活のいたるところに現れていたからだ。
そして、機織りの部屋に入ると、機織りの音に混ざって
「コッコッ」
と鳴き声が聞こえていたのだ。

(バレているのはあからさまなのに、この開けないでくださいはどっちだ?開けろってことか?)

男はしばらく葛藤した後、戸を開けることにした。

そこには、先日助けた鶴が機を織っていた。
男は全く驚かず、女の言葉を待った。

「開けてしまいましたね。私は、ここから去らなくてはなりません」

(そっちだったかぁ…)

男は頭を抱え、開けるなと言われた時は、開けてはいけないことを学んだ。

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