黒猫

ショートショート

朝、家を出ると黒猫が俺の車の前を横切った。
「危ない」

ハンドルを急いで切ると、車はガードレールに突っ込んだ。
猫は轢かずに済んだものの、車は大破した。
「大丈夫ですか?」
と通りかかった女性が声をかけてくれ、救急車を呼んでくれた。

しばらく治療にかかり、仕事も2カ月休まなくては行けなくなった。
ようやく治療が終わり、仕事に復帰しようとすると
「もう席ないから」
とクビを宣告された。
車も廃車になった。

(あの時に黒猫さえ横切らなくては)
退院した俺は、あの黒猫を探した。

(あそこから全てがめちゃくちゃになった。責任をとってもらうからな)

そして今、あの時の黒猫が隣ですやすや眠っている。
部屋の奥では妻が、鼻歌を歌いながら料理を作っている。
あの時、救急車を呼んでくれた女性だ。

仕事をクビになった時は目の前が真っ暗になった。
でも、馬車馬のように働くしか知らなかった俺が、今は好きなことを仕事にして穏やかに暮らしている。
あの日を境に人生が全く違うものとなった。

(責任取ってもらうからな、この招き猫め)

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