はじめに
「保護猫を迎えたい」
そう考えて、いろんな保護猫を見ていくうちに、身体に欠損や障害があったり、「猫エイズ」「猫白血病」の陽性の子が多くいることに気づかれた方もいると思います。
この記事では、その背景とそういう子をお迎えしたときの配慮することをお伝えします。
片目欠損、四肢欠損について
背景
保護猫には、片目が欠損していたり、欠損はしていなくても片目が失明している子も時々見受けられます。4本足のどこかが欠損している子もいます。
これは「虐待」によるものは多くはなく、ケガや病気の後遺症によるものがほとんどです。
目に関しては、野生で育った猫は、枝が目に入ってケガをしたり猫同士の喧嘩から負った傷が悪化することがあります。
重い猫風邪(猫ヘルペスウィルスや猫カリシウィルス、クラミジア感染など)で、眼球が癒着したり、角膜が白濁して視力を失うこともあります。

四肢に関しては、交通事故や、害獣駆除目的で設置された罠にかかって壊死する事もあります。
喧嘩などから出来たケガが重症化して壊死し、命をまもるために切断するケースもあります。
また、先天的に欠損して生まれてくる場合もあります。
飼育での配慮
お迎えする段階で、眼球摘出や四肢切断の治療が済んでいる場合は、普通の健康な猫と同じで、お迎え後に医療に多くかかる必要もありません。
猫は自分の身体感覚の掴み方に長けていて、欠損を補って空間を把握して行動します。
今の視覚から入る情報より、自分が把握している空間の認識に頼って、高低差のある場所を歩いたりのぼったりしています。そのため、物の配置が変わると、ぶつかったり落ちたりしてしまう危険があります。
片目失明のある猫を迎える際は、家具の配置替えは頻繁に行わず、自由に行動させながらも、視野欠損による転落などがないよう、すぐに手をさしのべられるような配慮があると猫も安心して暮らすことが出来ます。

四肢欠損の猫の場合は、普通の猫と変わらないようなジャンプ力で元気に走り回る子もいますが、運動面はやはり制限がある子が多いです。上るのは猫の本能で行ってしまいますが、降りる事が出来ない危険があるので、高いキャットタワーを作らない、低くて段差の小さい、その子に合わせた運動環境を作ることが大切です。
また、足の裏の肉球と違って、欠損部分の足の毛や皮膚は、歩くたびに擦れてしまうと、その部分の皮膚や骨に負担がかかることがあります。本来、猫に服を着せるのは毛づくろいがしにくくなるため、あまり推奨されないこともありますが、欠損部分を保護できる靴下や腹巻などは、着用できる方が体の負担を軽減できます。
猫エイズについて
背景
猫エイズとは、「FIV:猫免疫不全ウィルス感染症」のことを言います。
この病気の主な感染経路は、他猫との喧嘩での深い噛み傷によるものと、母子感染です。
保護猫は、縄張り争いで傷を負うことが多く、また、この猫エイズ陽性の母猫が出産することで、陽性の診断が出るのも珍しいことではありません。

飼育での配慮
この病気は、免疫力が徐々に低下していく病気です。陽性の反応が出ても、無症状の期間が長く、潜伏期間が長いことが特徴です。
無症状のまま、天寿を全うする猫も多いため、その場合は、観察は続けながら普通の猫と同じような飼育で構いません。
発症を遅らせるために出来ることがあります。
・完全室内飼いにする
・良質な食事や清潔の維持を維持し、免疫力を維持する
・軽い症状でも獣医に相談し、早期発見、早期治療に努める
このような配慮を続けて、共に生きる時間を少しでも長く、健やかなものにしたいものです。

「猫エイズ」は、人に感染することや犬のような多種の生き物に感染することはありません。猫同士の感染も、噛み傷からの感染なので、喧嘩するような関係性でなければ感染はほぼありませんが、穏やかな猫も、新入りの猫に対しては飼い主の想定していないほどに攻撃的になる子もいるんで、多頭飼育は、慎重に判断してお迎えしてください。
猫白血病について
背景
猫白血病とは、「FeLV:猫白血病ウィルス感染症」という病気で、「猫白血病ウィルス」が猫の血液やリンパ節、骨髄で増殖する病気です。
このウィルスは、主に母子感染と、唾液や鼻水、涙などの分泌物から感染が主な感染経路です。そのため、毛づくろいなどの他猫との接触でも感染するため、保護猫のように他猫との接触が多くあった環境下で、持続感染した場合は発症のリスクが高くなります。

飼育での配慮
「白血病」という名前ですが、実際に白血病(血液の癌)を発症するのは一部の猫で、多くは免疫不全による合併症が問題となります。この病気になると、免疫力が低下し、普段なら治るような風邪や傷が重症化しやすくなるため、少し気になる症状があったら、様子を観察せずに早めに受診して重症化させないようにすることが大切です。
人や多種の生き物(犬など)には感染しませんが、猫同士は唾液などの分泌物で感染するので、食器の共有や猫同士の毛づくろいでも感染の危険があります。
お迎えする時は、相性が良くても多頭飼育はせず、もし多頭飼育する場合は、同じ「猫白血病陽性」の猫同士で飼育する配慮が必要です。

お迎えした時に「猫白血病陰性」の子は、「ワクチン」を打つことで予防できる病気であり、完全室内飼いで感染リスクは大きく下がります。
飼い主がこの病気に配慮して丁寧に目を配りながら飼うことで、陽性でも元気に長く暮らす猫も多くいます。
猫風邪について
背景
「猫風邪」とは、「猫上部呼吸器感染症」という感染症のことを言います。
感染源のウィルス、細菌の種類は主に3種類あり、
・「猫ヘルペスウィルス1型」→「猫ウィルス性鼻気管炎」。重い鼻炎や角膜炎を引き起こします。
・「猫カリシウィルス」→口内炎や舌の潰瘍ができやすく、痛みが強い。
・「猫クラミジア」→粘り気のある目やにや、激しい結膜炎が特徴
というそれぞれの症状があり、「風邪」と名付けられていますが、その症状は人間の風邪のような軽い症状ではなく、「結膜炎」や「目やに」の症状が野性下で治療できずに重症化すると、目が開かなくなったり失明することもあります。

保護猫には「猫風邪」の既往歴が多い現実があります。理由は、野良猫は餌場や寝床を共有する「コロニー(群れ)」を作って生活することが多く、その中でのお互いの毛づくろいや同じ皿での食事で、とても簡単に感染してしまいます。また、母子感染も多いです。
猫風邪のウィルスは(特にヘルペスウィルス)は、一度感染すると体内に潜伏し、生涯にわたり再発を繰り返すことがあります。また、猫風邪に罹っている野良猫は非常に多く、野生下にいると、症状が治まってもまた感染する、を繰り返し、体調によっては症状が重くなることもあります。
飼育での配慮

「猫エイズ」「猫白血病」のように、保護猫の譲渡時に「猫風邪のキャリア」であるかどうかの確実な判断は出来ません。ですが、失明や眼球の白濁があったり、目やにや鼻水が常時見られる子であれば、猫風邪のキャリアである可能性が高いです。
「猫風邪」を経験した猫は、ストレスや加齢、季節の変わり目などで免疫力が下がった時に、また症状がぶり返すことがあります。
保護猫で迎えた子は、猫風邪キャリアかもしれないと念頭に置き、
「目やに粘っこい」「くしゃみを繰り返す」「毛玉を吐くとは違う吐き方をする」「下痢をしている」などの、いつもと違う様子が見られたら、悪化する前に早めの受診をお勧めします。
そして、今いる猫の感染を防ぐために、
・完全室内飼いをすること
・子猫期には年2回、成猫期には獣医師の指示に従って定期的に混合ワクチンを受ける
この2つを守ることで、猫風邪の感染を防ぐことが出来ます。

まとめ
配慮が必要なことは確かにありますが、そういう子は、「人に命を助けられた」「重篤な状態から回復させてもらった」経験を持つ子が多く、人が大好きで行動が慎重で奥ゆかしくて育てやすいといういう特徴を持つ子も多いです。
ハンディキャップごと愛して受け入れられる家庭に、少しでも多くの猫が迎えられますように。

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