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あすなろ

私は、あすなろの木が好きだ。明日は檜になろう、檜になろうと思いながら、どんなに足掻いても檜にはなれない。私と姉は、子どもの頃からピアノを弾いていた。姉は、才能の煌めきに満ちていて、誰もがその輝きの虜になる。私も姉に届こうと、姉の何倍も練習を...
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それからの浦島太郎

竜宮城で楽しい時間を過ごし、玉手箱を土産に帰ってきた浦島太郎。律儀な浦島太郎は、「数日留守にしたし、隣人に挨拶の手土産を届けなきゃ」と思い、留守を守ってくれたお礼に、竜宮城からもらった玉手箱を持参した。浦島太郎は、その後も若さを謳歌して暮ら...
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それからの青鬼

赤鬼のもとを去った青鬼は、一目を避けて人里離れた山の奥で一人で暮らし始めた。孤独ではあったが、誰にも差別されずに石を投げられない生活は、青鬼にとっては安らげる時間だった。山に住み始めてから青鬼は、この場所が口減らしのために人が捨てられる山で...
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眠り姫の目覚め

魔女の呪いによって眠りについた眠り姫。この呪いを説く方法は、王子のキスだけだった。姫の眠る城に足を踏み入れる者は訪れず、やがて屋敷には蔦が絡まり、草木が生い茂り、100年の時が流れた。そんなある日、たまたま通りかかった王子が「この城はなんだ...
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人生シネマ

少年が入った映画館は、今日は貸し切りだった。案内人が「では上演を開始します」と告げる。暗い世界から始まり、そこには、のぞき込む1人の男がいる。笑いながら泣いている。やがて画面に映る顔は、2人の男女になり、いないいないばあをしたり、しきりに画...
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犬系女子

「俺って犬系女子が好きなんだよね」片思いのS君の会話が耳に入った私は、その日から犬系女子の研究をした。「尻尾が振っているのが浮かぶくらい、笑顔で話を聞く」「甘えん坊で、上目遣いで見つめる」これを心がけるようにしたら、S君と目が合うことが多く...
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さっちゃん

私が小学生の頃、「さっちゃん」という、嘘しか言わない女の子がいた。「あの芸能人、私のいとこなんだよ」「学年のアイドルの男の子に告白された」「テストで満点を取った」あまりにわかりやすい嘘をつくので、同級生は次第に距離を置くようになった。外見が...
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デスゲーム

人を信じれない男は、いずれ密室でのデスゲームを開催し、人が蹴落とし合う姿を見て楽しめる日を夢に描いて生きていた。男は人里離れた廃屋を買い取り、年月をかけ、ようやく念願のデスゲームを決行できる舞台は整った。参加者は4人。どんな人が来ようと、人...
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つぶやき規制法

SNSでデマを拡散する、無責任な発言が横行するこの現状を危惧して、政府が新しい法案を制定した。その名も「つぶやき規制法」。つぶやきを1日3回までとすること。デマを拡散しないように真実のみつぶやくこと。または、デマとならないようにつぶやいたこ...
思春期

思春期のメンタルの症状【当事者はどんな苦しさを抱えているのか】

はじめに私自身、21年前にドスンと重いうつ症状が出て、その後もそれでも何とか社会で暮らし続けている中で症状が増えていき、複雑化していっています。はじめて通院した時に、精神科の医師に「あなたの鬱は、今回はショックな出来事がきっかけだったけど、...