ショートショート

コピーライター

俺はスランプに突入していた。「ありきたりなんだよね」「何か、長くて心にスパンと刺さらないんだよな」依頼先から、こう言われることが続いた。今日もパソコンに長い時間向き合っているが、何も言葉が浮かんでこない。締め切り3分前、納品しない訳にはいか...
ショートショート

時効

娘が殺されて20年。ついに時効の日が来てしまった。あの日から、娘を守れなかったふがいなさと犯人への怒りは、年月とともに薄まることもなく、今でも犯人が現れたら怒りで殺してしまうかもしれない。時効の朝、「犯人、見つけてあげれなくってごめんね」と...
ショートショート

井の中の蛙

僕は、田舎の小学校で「神童」と呼ばれていた。皆に尊敬され、学校では「Ⅿの成績を見習え」と話され、近所のおばさんには、「うちの子もⅯくんみたいになってほしいわぁ」と引き合いに出されることが多かった。高校進学の時、「こんなところにくすぶっている...
ショートショート

同窓会

俺は、パッとしない学生時代を送り、パッとしない就職をし、パッとしない結婚をして、今もまた、相変わらずパッとしない毎日を送っている。そんなある日、中学校の同窓会の案内状が届いた。今、交流のある奴もいないから、これが何かのきっかけになるかな?と...
ショートショート

走れメロス

セリヌンティウスは激怒した。「走れ、メロス。何を休んでるんだ?」と。勝手に自分を代理の人質として差し出しておきながら、妹の結婚式を楽しんだり、途中で戻るのをやめようとしたり…。普通に戻ってきていたら、日暮れまでかかる距離ではない。ウサギとカ...
ショートショート

喜劇王

青年は喜劇王に弟子入りした。「お前は、笑われる人、笑わせる人、どっちになりたい?」と尋ねられ、(笑われるのは何か嫌だな)「笑わせる人、かな?」と答えた。次の日、師匠は膨大な本を青年に渡した。歴史書、哲学書、文学書、聖書などだ。数千冊の本を読...
ショートショート

信長とホトトギス

「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」信長に捕らえたホトトギスは、恐怖で固まっていた。侍従が勘違いして捕らえたが、自分はホトトギスではない。「さあ、鳴いてもらおうか?」信長に睨まれながら、捕らえられた鳥は、聞いたことのある鳴き声をまねる。...
ショートショート

隣のスーパーマン

私はスーパーマンの正体を知っている。私の同僚だ。職場の人皆が、何となく気づいている。いつ呼ばれても大丈夫なように、通勤バッグにスーパーマンの服を入れて持ち歩いており、書類を出す時に時々見えているからだ。スーパーマンを呼ぶ声が聞こえると、彼は...
ショートショート

リピート

朝、目を覚ますとカレンダーを見る。4月15日。(また戻ってる)この朝を、もう何十回も繰り返している。(何故、先に進まない?)私は、思いながらも階段を降りる。「おはよう」お弁当を作りながら、母が私に声をかける。これもまた同じ繰り返しだ。母が言...
ショートショート

トンビが鷹を生む

少年は苦悩していた。(これが僕の限界なんだ、わかってくれ)トンビが鷹を生む。これは、珍しくないと少年は感じていた。自分の生い立ちに悔いて、子供の教育に力を入れてくれる。親も、自分の子どもなのに、という認識があるから、親を少しでも抜くと、「う...