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雀の涙

知り合いに、困っている人がいた。私はその分野に明るかったから、彼のサポートをし、何とか窮地を切り抜けた。「お礼をさせてください」という彼に、「好きでやったんですからお構いなく」と返答したが、彼は「そんなこと言わないで受け取ってください。あな...
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コナン

未来辞典より引用「コナン」:死神。出現地点の周囲に殺人事件が起きるという特異な現象。(類似語)金田一。(出現条件)旅行・同窓会・孤島。
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失礼ですよ

私は、今日からファミレスで働き始めた。接遇マナーも覚えたし、さあ、頑張ろう。「お客様、おひとり様でよろしかったでしょうか?」「どうせ私に連れ合いなんていないと思ったんでしょう?失礼ですよ」「ライスは無料で大盛に出来ますがいかがですか?」「私...
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猿も木から落ちる

私は、朝からずっと動物園の猿山を観察していた。「猿も木から落ちる」かどうかを確認するためだ。結果は、落ちるというより、後ろから押されたり、威嚇されたり、普通に落ちていた。ただ、落ちても皆、痛みを引きずる様子はなく、すぐにまた木に登っていた。...
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ルービックキューブ

(人生とはルービックキューブのようなものだ)私は気づいた。一面を揃えようと没頭していると、残りの五面がぐちゃぐちゃになる。私にとっての一面は、市長としての顔だった。市民の声を聞き、人のために奔走し、私の仕事は評価され、尊敬もされていた。しか...
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命名

僕の名前は「鳥」だ。名付けた父に言わせると。「鳥のように自由に羽ばたける子になってほしかったから」とかもっともらしい理由を言われるが、そんなわけない。今日も、病院の診察室で「渡鳥様、渡鳥様」と呼ばれ、皆が僕の方を振り向き、笑うのだ。「渡」と...
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サイコパスとその妻

私は、若いころから感情が平坦であった。人の喜びや痛みに共感できないのだ。(なんでペットが死んで泣いているのだろう?)(なんで卒業式ごときでこんなに泣けるんだ?)泣いて取り乱す人を、無感情で眺めていた。そんな私に、好意を持ってアプローチしてき...
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七五三

2080年。日本は少子高齢化問題に直面していた。若者が圧倒的に足りなく、二十歳以降の成人が社会を支える構造が崩壊寸前だった。そこで、七五三の七歳を迎える年に成人とみなす式典を行い、七歳から働き手として社会に羽ばたくことになったのだ。子どもで...
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シンデレラの異母姉たち

私たち姉は、別にシンデレラに意地悪なんてしていない。シンデレラが、悲劇のヒロインになりたがっていたのだ。朝起きると、数あるクローゼットのドレスの中から、一番みすぼらしい服を選び、「お姉さんたちにいじめられているの」と吹聴してまわる。「掃除は...
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魔女の言い分(ヘンゼルとグレーテル)

私はパティシエだった。魔女なんかではない。顔が鷲鼻で、ちょっと人相が悪かっただけだ。職人の世界では、強面の人は珍しくない。ある日、お菓子の家を作ってほしいという注文が入った。家サイズのお菓子なんて、前代未聞の無茶な注文である。でも私は、腕の...