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走れメロス

セリヌンティウスは激怒した。「走れ、メロス。何を休んでるんだ?」と。勝手に自分を代理の人質として差し出しておきながら、妹の結婚式を楽しんだり、途中で戻るのをやめようとしたり…。普通に戻ってきていたら、日暮れまでかかる距離ではない。ウサギとカ...
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喜劇王

青年は喜劇王に弟子入りした。「お前は、笑われる人、笑わせる人、どっちになりたい?」と尋ねられ、(笑われるのは何か嫌だな)「笑わせる人、かな?」と答えた。次の日、師匠は膨大な本を青年に渡した。歴史書、哲学書、文学書、聖書などだ。数千冊の本を読...
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信長とホトトギス

「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」信長に捕らえたホトトギスは、恐怖で固まっていた。侍従が勘違いして捕らえたが、自分はホトトギスではない。「さあ、鳴いてもらおうか?」信長に睨まれながら、捕らえられた鳥は、聞いたことのある鳴き声をまねる。...
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隣のスーパーマン

私はスーパーマンの正体を知っている。私の同僚だ。職場の人皆が、何となく気づいている。いつ呼ばれても大丈夫なように、通勤バッグにスーパーマンの服を入れて持ち歩いており、書類を出す時に時々見えているからだ。スーパーマンを呼ぶ声が聞こえると、彼は...
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リピート

朝、目を覚ますとカレンダーを見る。4月15日。(また戻ってる)この朝を、もう何十回も繰り返している。(何故、先に進まない?)私は、思いながらも階段を降りる。「おはよう」お弁当を作りながら、母が私に声をかける。これもまた同じ繰り返しだ。母が言...
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トンビが鷹を生む

少年は苦悩していた。(これが僕の限界なんだ、わかってくれ)トンビが鷹を生む。これは、珍しくないと少年は感じていた。自分の生い立ちに悔いて、子供の教育に力を入れてくれる。親も、自分の子どもなのに、という認識があるから、親を少しでも抜くと、「う...
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蜘蛛の糸

俺は、多くの罪を犯してきた。地獄に落ちても仕方のないような男だ。ある日、空腹でふと空を見上げると、そこに一本の細い糸が空から降りてきていた。「もしかして、これがあの有名な蜘蛛の糸か?」そういえば、俺も以前に一度、逃走中に足元にいる蜘蛛を助け...
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し刑

裁判所は、緊張に包まれていた。「判決は、し刑」(まだわからない。どっちだ?)被告人は、祈る思いで画面を見つめる。画面にその文字があらわれると、傍聴席の遺族は狂喜し、被告人はガタガタと震えはじめた。「娘がどんな気持ちだったか、今からたっぷり思...
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ピノキオ

ピノキオに、嘘を鼻が伸びるように魔法をかけようと、杖を振った妖精。しかし、杖を振った方向を間違えてしまい、鼻ではない場所に魔法をかけてしまった。「昨日。こーんな大きな魚を捕まえたんだよ」そう話すと、パンツの中に違和感が…。嘘をつくたびに、彼...
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死刑囚の夜

長い廊下を通り、部屋に通されると、輪になったロープが垂れ下がっている。「嫌だ、やめてくれ」泣き叫び、抵抗する私を両脇から掴み、台に上げられる。床の板が落ち、ロープが首に食い込んでいく。(苦しい、助けてくれ…)目が覚めると、そこは独房だった。...