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側近

私の特技は、会話だ。何も、特別なことは言っていない。自分の意見を挟まず、相手が答えを導けるよう、会話で誘導する。結果、私はトップの人物の側近に置かれ、大切な財産も任されるようになった。現場で働き、その地位を狙っていた人には、私の存在は疎まし...
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ウルトラマン

はるか300光年先からやってくるウルトラマン。ある日、一人の子どもが尋ねた。「何でそんな遠くから、地球のために来てくれるの?」「それは、近くで仕事がないから仕方なく…」話している最中に、ウルトラマンのランプが点滅し始める。もうすぐ3分になり...
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三途の川

父との別れの時が来た。家族は、棺に遺品を入れ、胸元に三途の川の渡し賃を忍ばせる。火葬前の夜、家族がしんみりとを過ごしている時、棺桶の中の父が起き上がった。驚いて固まっている私たちに、父が言った。「三途の川の渡し賃が、電子マネーに変更になった...
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現代音楽家

私は、新進気鋭の現代音楽家だ。不協和音の多用や変拍子など、独自の作品観が音楽批評家を始め、多くの人たちに評価されていた。新曲の発表公演が近づいてきた。しかし、最近、耳の聴こえがが悪い。ベートーヴェンだって、その状態で作曲していたじゃないかと...
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偽善者

私は偽善者だ。常に、心ではなく、頭で考えて行動している。どう動けば、良い人間に思われるか?感謝され、尊敬されるか…。私の策略は、すべて計算通りに進み、今はノーベル平和賞の授賞式の壇上にいる。何十年もこの生き方をしていて、気づいたことがある。...
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人口調整法

人口が爆発的に増え、食糧難の問題が深刻になった。そこで、政府は新しい法律を制定した。「人口調整法」子どもを出産する際には、その人数を間引いて調整すること。夫婦は、子供を身籠ると、誰を間引くか夫婦で殺害計画を立て始める。非力で孤独な老人が、タ...
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パイオニア

マラソンを見る時、「あぁ、最初に前に出てしまったか。後半のラストスパートで、抜かれるんだろうな」とハラハラしてしまう。長距離走では、前を走ることが、他の選手の向かい風も引き受け、後ろに続く者たちに通りやすい道程を作ってしまう。そして、ここぞ...
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勝手にカップヌードル

夜食は、カップヌードルと決めている。3分の砂時計をセットし、その時間だけ、悩んだり、今日の反省をしていいことにした。もともとは、クヨクヨしたり、物事を悪い方に考えやすい性分である。3分悩んで、カップヌードルを食べて、「今日の悩む時間はおしま...
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忘れ物

僕は今、門の前にいる。「さあ、どうぞ」と門番に声をかけられたが、何かひっかかる。「忘れ物をした気がするんです。取ってきてもいいですか?」「…、そうですか、仕方ないですね。では、夕刻、門が閉まる前に戻ってくださいね」そして、今日の朝に戻ってい...
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足跡

私は、仕事で成功をし、莫大な富を築いた。その富におぼれず、社会貢献活動もしている。そんな私だが、消したい過去がある。成功する前、若気の至りで、かなりの悪さをしていたのだ。もう足を洗ったが、私が成功してから、かつての悪友が自分の前に顔を出すよ...