僕は今、門の前にいる。
「さあ、どうぞ」
と門番に声をかけられたが、何かひっかかる。
「忘れ物をした気がするんです。取ってきてもいいですか?」
「…、そうですか、仕方ないですね。では、夕刻、門が閉まる前に戻ってくださいね」
そして、今日の朝に戻っていた。
「行ってらっしゃい」
「うるせーなぁ、いちいち」
捨て台詞を吐き、学校に向かっている僕がいた。
僕は、自分と入れ違いに玄関に入っていった。
「あれ?学校に行ったんじゃなかったの?」
「うん。…ちょっと、言い忘れたことがあって戻ってきたんだ」
「?」
「この間、死ねって言ってごめんなさい。
子どもの頃、熱が1週間続いたとき、寝ないでずっと枕もとにいてくれたよね。
友達と悪いことした時は、あの時謝れなかったけど、心配かけてごめんね。
あと…、あの…、うーん、言葉がまとまらない。
…でも、お母さんの子どもに生まれて幸せだった。…。ありがとう」
「何言ってるの?めずらしい」
そういいながらも、母の目は涙ぐんでいた。
「…どういたしまして」
遠くから、救急車の音が聞こえる。
表の道で、交通事故があったようだ。
戻ると、夕刻になっており、門が閉まりかけていた。
「よかった、間に合いましたね」
門番が僕に話しかける。
「忘れ物は、もうありませんか?」
「はい」


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