短編集

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背比べ

小学六年で母の背丈を追い越し、母の白髪に気づいた。中学3年で父の背丈を追い越し、父の後頭部の退行を日々観察している。高校2年で兄の背丈を追い越し、自分だけが届くと思って隠していた本を見つけてしまった。今、家族で一番、僕が皆の秘密を知っている...
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ぴーちゃん

結婚して子供も授かる気配がなかった夫婦は、インコを飼い始めた。「おはよう」「ぴーちゃん」我が家のインコはよくしゃべる。「ぴーちゃん、かわいい」「しねばいいのに」「えっ?ぴーちゃん、今、何て?」その日の夜、妻はそっと家を出た。
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のろまなカメ

「ウサギは、昼寝をしているうちに、カメがゴールに着いてしまいました。さぁ、皆さんのお手本にするのはどちらですか?」「カメでーす」子供たちが一斉に答える。「……いいですか。遅くて、休憩もしないでやっと勝てるカメをお手本にするなんて、将来は社畜...
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十六夜

1人の彫刻家がいた。天賦の才に加え、寝食を削るほどの努力家であった彫刻家は、他の追随を許さないほどの存在となり、芸術家としての黄金期を迎えていた。彫刻家が、自分でも見惚れるほどの「聖母マリア像」が完成したその夜、彼は頭を殴られたような激しい...
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あすなろ

私は、あすなろの木が好きだ。明日は檜になろう、檜になろうと思いながら、どんなに足掻いても檜にはなれない。私と姉は、子どもの頃からピアノを弾いていた。姉は、才能の煌めきに満ちていて、誰もがその輝きの虜になる。私も姉に届こうと、姉の何倍も練習を...
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さっちゃん

私が小学生の頃、「さっちゃん」という、嘘しか言わない女の子がいた。「あの芸能人、私のいとこなんだよ」「学年のアイドルの男の子に告白された」「テストで満点を取った」あまりにわかりやすい嘘をつくので、同級生は次第に距離を置くようになった。外見が...
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デスゲーム

人を信じれない男は、いずれ密室でのデスゲームを開催し、人が蹴落とし合う姿を見て楽しめる日を夢に描いて生きていた。男は人里離れた廃屋を買い取り、年月をかけ、ようやく念願のデスゲームを決行できる舞台は整った。参加者は4人。どんな人が来ようと、人...
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つぶやき規制法

SNSでデマを拡散する、無責任な発言が横行するこの現状を危惧して、政府が新しい法案を制定した。その名も「つぶやき規制法」。つぶやきを1日3回までとすること。デマを拡散しないように真実のみつぶやくこと。または、デマとならないようにつぶやいたこ...
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未来旅行

博士は、人並外れた頭脳をタイムマシンの製作に注ぎ込み、ついに未来に行けるタイムマシンを発明した。未来旅行の第一号だ。博士はダイヤルを50年後に合わせ、未来へと出発した。50年後の街並みは、どこかおかしい。近未来都市になっているかと思っていた...