パイオニア

ショートショート

マラソンを見る時、
「あぁ、最初に前に出てしまったか。後半のラストスパートで、抜かれるんだろうな」
とハラハラしてしまう。

長距離走では、前を走ることが、他の選手の向かい風も引き受け、後ろに続く者たちに通りやすい道程を作ってしまう。
そして、ここぞというタイミングで先頭が逆転し、どんどんと置いていかれるのだ。

私は、ある機械メーカーの開発をしている。
画期的な発明で、開発の段階では
「出来るわけないだろう」
「馬鹿げた夢物語だ」
と鼻で笑われ、
発表し、世に出してからは、なじみのない商品なので、世の中に自分の功績を広める事に苦戦した。
やっと時代が追い付いた。
私の開発した商品で、世の中は飛躍的に前進した。

こうなると、次は、他社の「改良」という追い上げがやってくる。
私は、「特許」を取り、権利を自分の手元に置いておくか悩んでいた。

どんどんと私の商品は改良されていき、私の発明品を、不便と感じる人も現れるだろう。
0から1を生み出せる人は稀だが、1を10にする人、100にする人は世の中にはたくさんいる。

(追い越されてもいいじゃないか?私の切り開いた道にこそ価値があったのだ)

私は、特許出願はしないことにした。この発明が、未来に種を蒔くことになるように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました