それからの青鬼

ショートショート

赤鬼のもとを去った青鬼は、一目を避けて人里離れた山の奥で一人で暮らし始めた。
孤独ではあったが、誰にも差別されずに石を投げられない生活は、青鬼にとっては安らげる時間だった。

山に住み始めてから青鬼は、この場所が口減らしのために人が捨てられる山であることに気づく。
ある日は老婆がこの山に捨てられ、またある日は幼い少年が山に置き去りにされた。

青鬼は、老婆と少年を自分が立てた東屋に招き入れ、少ない食べ物を分け合い、身を寄せ合って暮らすことにした。

この山にも良いことがあった。人が避けるような過酷な山だからこそ、貴重な食材がとれたのだ。
青鬼がその食材を収穫し、少年が里に下りてそれを売り、別の食べ物に変えて山に戻る。それを老婆が調理した。そこには温かい、家族のような団欒があった。

たくさん収穫できた時には、財宝に変えることもあった。その財宝を磨いて眺めることが、過酷な環境での暮らす青鬼にとって唯一の娯楽であり、癒しであった。

そのうち、あの姥捨て山には鬼が住んでおり、その鬼が金銀財宝をがっぽり集めている、と里で噂されるようになった。

ある日、里の中から「我こそが鬼を退治して、金銀財宝を奪ってくるぞ」と、1人の青年がたちあがり、犬と雉と猿を連れて、山に夜襲をかけてきた。

「鬼を倒しに来たぞ。金銀財宝を差し出せば、命だけは助けてやる」

青鬼は、
「自分が犠牲になればいい、あなたたちは逃げなさい」
と老婆と少年に声をかけた後、自分は玄関から飛び出し、犬、雉、猿に一斉に襲われる。
少年は青鬼を助けようと飛び出そうとしたが、老婆に腕を引かれ、転がるように山から逃げていった。

3匹の攻撃で虫の息となった青鬼が
「私の財産はこれで全部です。仲間もいません」
と話すと、青年はその金銀財宝をすべてリヤカーに乗せて、山を下りて行った。

青年は、鬼を成敗し、金銀財宝を里にもたらした「正義のヒーロー」と讃えられた。

里でのフィーバーを物陰から眺める2人の人物がいた。
老婆と少年だ。
少年は老婆に尋ねる。
「鬼はなぜ退治されなくてはならなかったの?彼は僕らを助けてくれた。何も悪いことをしていなかったのに…。」

老婆は静かに答える。
「鬼とは何だと思う?角が生えている事?その意味では青鬼は鬼だったかもしれない。でも、彼は心は鬼ではなかったよ。良くないのは、外見は人間でも心に鬼を棲まわせている人だ。お前が大人になる時は、心に鬼を持つ人と闘うのだよ」

2人はまた人里を離れた山へと帰っていった。
もうそこに、青鬼の姿はなかった。

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