俺はスランプに突入していた。
「ありきたりなんだよね」
「何か、長くて心にスパンと刺さらないんだよな」
依頼先から、こう言われることが続いた。
今日もパソコンに長い時間向き合っているが、何も言葉が浮かんでこない。
締め切り3分前、納品しない訳にはいかず、パソコンで一文字だけ打って送信した。
10分後、依頼先から電話が来た。
「斬新だね。そうきたか、と感心したよ」
と電話の向こうの声が弾んでいる。
俺が送ったキャッチコピーは
「えっ」
商品に対しての絶句するような驚きと感動がその一言に込められていると、このキャッチコピーの評判は上々だった。
それから俺は、依頼が届くと、1文字だけ入力して送信する。
珍しい商品だったら
「おっ」
変わった商品だったら
「むっ」
可愛い商品だったら
「きゃっ」
怖い商品だったら
「ぞっ」
俺の一言キャッチコピーは、俺の作品の代名詞となり、高い評価を受けた。
今日もまた、革新的な商品のキャッチコピーを依頼された。
俺は
「…」
と入力した。

コメント