箱の中

ショートショート

僕は、ある日家に人がバタバタと入ってきたと思ったら、後ろから押され、この箱に閉じ込められた。
かろうじて食事が投げ入れられる隙間だけがあるものの、昼か夜かもわからず、時間の感覚もなくなりそうだ。

食事が三回投げ込まれたら「一」と数え、正の字をつけて、何とか日付の感覚や、精神の均衡を保とうとしている。
正の字は、三百を超え、もうすぐ一年を迎えようとしていた。
いつになったら出れるんだろう。
気が狂いそうだよ。

時代は第二次世界大戦。
ユダヤ人である我が家は、身を隠して暮らしていた。
ドイツ人が全員悪い訳ではない。
私たちに屋根裏を提供してくれた家族もまた、ヒットラーの差別主義に憤りを感じていたが、声をあげる事は出来なかった。

もし、この屋根裏の我が家族が見つかった時、本当に小さなスペースに、いざとなったら子供を置いていく。入れるのはその子だけだからだ。
もしその時がきたら、その子に食事を与え、この迫害が終わった日には、その箱の鍵を開けてほしいとドイツ人家族に頼んだ。

ある日、屋根裏に親衛隊が突入した時、家族は幼い子供を無言で箱に押し込み、家族は連行されていった。

箱の中は、暗闇で、光も娯楽もない。
でも、暗闇は永遠には続かないはずだ。
この暗闇の先に、希望の未来が、待っていることを信じて…。

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