ある秋の夕刻。
母と子どもは、家までの道を歩いていた。
背後には大きな影が伸びている。
しかし、影は一つ。
子どもの影だけだった。
「どうしてママの影はないの?」
「それはね…」
「大人になると影は無くなるんだよ」
「へぇ、そうなんだぁ」
子どもはそう返答し、
「あっ、パパ帰ってきた」
と父のもとに走っていく。
「今日もいい子にしてたかい?」
「うん。さっきまでママと一緒にいたんだよ」
「…そうかぁ」
妻は1か月前、交通事故で亡くなった。
子どもの目の前でだ。
息子は、精神的ショックからか、その後も
「ママと遊んだ」
「ママと一緒に帰ってきた」
と話し続ける。
「ママはね、…」
子どもに真実を伝えるべきか、まだ悩んでいる。

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