犬系女子

ショートショート

「俺って犬系女子が好きなんだよね」

片思いのS君の会話が耳に入った私は、その日から犬系女子の研究をした。

「尻尾が振っているのが浮かぶくらい、笑顔で話を聞く」
「甘えん坊で、上目遣いで見つめる」

これを心がけるようにしたら、S君と目が合うことが多くなり、ある日、
「今度の休み、デートに行かない?」
と声をかけてくれた。

私は嬉しくなり、デートに向けて犬のしぐさの研究をさらに進めていった。

そしてデート当日。
私は待ち合わせより早く行き、S君が現れると満面の笑みで迎えた。
それから彼の後ろに回り、お尻の匂いを嗅ぎ、顔をベロベロと舐めた。

「えっ、…今からどこ行こうか?」
「アオーン、キャンキャン(フードコート行
きたい)」

フードコートに着くと、一緒にハンバーガーセットを注文し、
「ワオーン(いただきます)」
と言った後、S君の足元にトレイを置き、床でご飯を食べ始めた。

いつもは明るく話し好きなS君。なぜか今日は口数が少ない。
(初デートに緊張しているのかな?かわいい)
私は、普段と違うS君もまた、愛おしく感じた。

その時、尿意がもよおした。
私は、フードコートの中の匂いを嗅ぎながら、一つの柱に向かって、さあ、しようとした瞬間、

「俺、もう帰るわ」

と言って立ち上がり、急に帰っていってしまった。

次の日から、S君は私をおびえた目で見るようになり、近づいてこなくなった。

何故だろう、私はS君の理想の「犬系女子」になったのに……。

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