魔女の言い分(ヘンゼルとグレーテル)

ショートショート

私はパティシエだった。
魔女なんかではない。
顔が鷲鼻で、ちょっと人相が悪かっただけだ。
職人の世界では、強面の人は珍しくない。

ある日、お菓子の家を作ってほしいという注文が入った。
家サイズのお菓子なんて、前代未聞の無茶な注文である。
でも私は、腕の良いパティシエである。
高額で引き受けた。

道のりは険しく、完成まで一年の月日がかかった。
やっと完成し、明日納品しようとしていた夜に、二人の子どもがやってきて、大半を食べてしまった。

「無銭飲食」であり、「納期妨害罪」だ。
怒って当たり前である。

そんな私に対して、やれ「魔女」だとか、「食べられそうになった」とか。

因縁も甚だしい。
食にこだわりのある私が、あんた達を食べるわけがないでしょう。
まずは、素直に
「ごめんなさい」
が言えないのか?
親のしつけはどうなっているんだ?

しまいには、一からお菓子の家作りをやり直している私に背後から近づき、鍋に突き落として逃げていった。

ああ、許せない、許せない…。


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