イーハトーブに想う

ショートショート

アメニモマケズ

学生時代にこの詩に感銘を受けた私は、生涯にわたってこの生き方に倣おうと心に決めた。

人間関係では、困っている人に心を寄せて、手助けできることを探した。
職場でも、人の嫌がる仕事を率先して行い、自分の手柄より、周囲をサポートすることに徹した。
声高に語らない善は、褒められることもなかった。
そのことに嘆くこともなく、笑顔を絶やさなかった。

華やかさはないが、こうなりたいと思える道を歩め、幸せな生涯だったと思う。
そろそろお迎えが来たようだ。

空を見上げると、夜空を駆ける銀河鉄道が、こちらに向かってくる。

「長い間、お疲れ様でした。行き先はどちらへ?」
「イーハトーブへ連れて行っておくれ」

男は、夜空へと消えていった。

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