1人の彫刻家がいた。
天賦の才に加え、寝食を削るほどの努力家であった彫刻家は、他の追随を許さないほどの存在となり、芸術家としての黄金期を迎えていた。
彫刻家が、自分でも見惚れるほどの「聖母マリア像」が完成したその夜、彼は頭を殴られたような激しい頭痛に見舞われた。
命は取り留めたものの、彼の右腕はもう動かない。
彫刻家は、次の日から左手での彫刻作りを始めた。
七年後、一つの作品が誕生した。
「マグダラのマリア像」
利き手ではない手で、長い時間をかけて制作した彫刻は、かつての清らかな美しさとは違い、武骨で泥臭い感情を感じさせる生々しさだった。
欠けてもなお、いや、欠けたからこそ美しい、十六夜の月のようであった。



コメント