シューベルト【歌曲のおすすめ曲】

クラシック音楽

はじめに

シューベルトの曲の魅力を語るなら、まずは歌曲は欠かせません。
彼は生涯に約1000曲の曲を遺しましたが、その中の600曲程が歌曲です。

シューベルトは、ゲーテ、ミュラー、ハイネなどの詩を愛し、詩からインスピレーションを得て、様々な世界観の曲を作り続けました。

歌曲集

シューベルトは、連作歌曲集が2作(「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」)、死後に編まれた歌曲集を1曲(「白鳥の歌」)を遺しています。

「美しき水車小屋の娘」

シューベルトの時代は、粉を引く仕事には水車が欠かせませんんんでした。
粉ひき職人として修業の旅に出た一人の若者が、見習いに入った先の水車小屋の娘に恋をします。
しかしその娘は狩人と恋仲になり、粉ひき職人は失恋の悲しみから川に身を投げ、自殺する、という物語です。
ミュラーの「旅のワルトホルン吹きの遺稿からの詩集」に強い感銘を受け、原詩集に中の20篇に曲をつけた連作歌曲集です。

希望と絶望、愛と喪失、自然との対話
様々な表情で彩られた抒情的な曲が魅力です。

希望に満ちた第1曲「さすらい」、恋が叶ったと思い、喜びを爆発させる第11曲「僕のものだ」など、青年の心の機微が手に取るように伝わる美しい旋律が胸に響きます。

「冬の旅」

シューベルトが30歳の時に作った、ドイツの詩人ヴィルヘルム・ミュラーの詩集に曲をつけた、2部に分かれた24の連作歌曲集です。

1人の恋に破れた若者が、さすらいの旅を続けていくというストーリーです。
24曲中16曲が短調という、全体を通して悲しみや絶望の中にいる事を感じさせる曲集ですが、その中でも希望を探して生きるような、1人の人物の心の移ろいを丁寧に描いています。

この中でも「菩提樹」が有名です。大きな菩提樹と共に日々を生きた青年が、苦悩の旅路を経て、菩提樹を懐かしむ、温かさと切なさが同時に宿った、静かな子守唄のように優しい曲です。

曲の印象は温かいのですが、最後に菩提樹が青年に語り掛ける
「ここに来れば休めるよ、ここにいればいいんだ」という優しいささやきは、単なる癒しではなく「死」への誘いでもあります。
曲の第一印象では気づかない、癒しの中に死の誘惑を織り交ぜた、深みのある曲です。

単独の歌曲

「魔王」

18歳の時に、ゲーテの詩に曲をつけて完成した作品です。

病でうなされる息子を乗せ、馬車を走らせる父。背後から忍び寄る魔王。
甘美な声で「私と一緒においで」と誘惑する魔王。
子供は父にその気配を告げ、次第に恐怖を募らせ、父にすがります。
父は、「あれはただの霧だよ」「あれは柳の葉だよ」
と、父は安心するように優しくなだめます。
子供の声はだんだん叫びに近い声に変わっていき、
ようやく家に辿り着いて、いざ息子の方に振り返った時に、すでに息子は絶命していた、

という物語です。

この曲のすごさは、父、息子、魔王、語り手の4人の登場人物で描かれていて、全員の登場時の曲調が違う事。

父は、ゆるやかで優しくなだめるトーンで
息子は、だんだんと恐怖が募り、次第に叫び声に近いトーンで
魔王は、誘惑するような甘美なトーンで
語り手は淡々と、最後はぶつりと終わる。

この曲の緊張の鼓動を伝えるのがピアノ伴奏の連打音です。
急ぐ馬車の馬の足音、聴き手を不安にするような緊迫感を演出しています。

「アヴェ・マリア」

グノー、カッチーニ、そしてシューベルトの作曲した「アヴェ・マリア」が「三大アヴェ・マリア」と言われています。

その3曲の中でも、最も耳にする事の多いのがシューベルト作曲の「アヴェ・マリア」です。

イギリスの詩人ウォルター・スコットの物語詩「湖上の美人」の一部分を題材に作曲された曲です。
「アヴェ・マリア」とは、キリストの母、聖母マリアへの祈りです。
物語の主人公が聖母マリアに祈りを捧げ、救いを求めている場面を音楽で描いています。

天上に届くような、優しく清らかな旋律は、聴いているものを深い安らぎに導きます。

子守歌

シューベルトらしい清らかさと柔らかさの両面を備えた、眠りに導くような優しい曲です。
19歳の時に作曲されたこの曲は、シューベルトが15歳の時に亡くなった母を想って作曲されたと言われています。曲と歌詞に優しさと慈愛が満ちており、母の手に抱かれた赤ちゃんの時のような気持ちに包まれます。
本来の原曲の歌詞のドイツ語では、2番の歌詞に「Grabe」(墓)という言葉が出てきており、「眠れ 眠れ 心地よい墓の中で」という日本語訳が付けられています。その事から、赤ちゃんを寝かしつける子守歌の意味と、亡き赤ちゃんへの鎮魂歌の意味で作られたものとの二つの説が語られています。

鱒(ます)

題名は魚の「鱒」ですが、鱒についての歌ではなく、漁師がずる賢い手法を使って鱒を釣り上げた様子を見て、「若いお嬢さん、男はこのようにして女性をたぶらかすんだから気をつけなさい」とウィットに富んだ明るい曲調で語り掛けるユニークな曲です。

伸びやかな曲調とかけあうピアノ伴奏が掛け合う美しいこの曲は、シューベルト自身がその後にこのメロディーを使い、ピアノ五重奏曲「鱒」として発展させています。こちらも、また違う魅力を持つ、春の陽気のような伸びやかさを感じさせる傑作となっています。

まとめ

清らかな曲、優しい曲、コミカルな曲、恐怖が忍び寄る曲、恋の楽しさや苦しみ、人生の印影ーー

様々な表情を持つ曲を、身近なものとして作り続けたシューベルト。彼の歌曲とピアノの絶妙な掛け合いは、後の作曲家にも多大な影響を与えています。

彼の魅力は歌曲に留まりません。次回は、シューベルトの「ピアノ曲のおすすめ曲」をご紹介します。

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