心が浄化される歌声【祈りを纏った3つの声】

歌声

はじめに

聴くことで、心が洗われるような清らかな歌声の持つ人が、この世には存在します。
変声期前の儚い時間、声のために人生を捧げた人、そして天から授けられた声。
それぞれ背景は異なりますが、ここでは私が「心が浄化される」と感じたを3つの‟祈りの声”をご紹介します。

ウィーン少年合唱団

はじまりは神聖ローマ帝国の時代。
教会の礼拝堂で賛美歌を歌う合唱団として設立されました。

10歳からの少年のみで構成され、声変わりを迎える14歳に退団します。ソプラノとアルトのパートのみで構成されています。
その限られた時間を切り取った歌声は「天使の歌声」と評され、掴もうとすると崩れてしまいそうな、儚くもろい美しさがあります。
現代では世界中で演奏活動を行い、賛美歌以外も幅広く歌っていますが(日本公演では「故郷」を歌っていたりも)、心の浄化には、祈りの心が込められている賛美歌がおすすめです。

おすすめ曲:グレゴリオ聖歌「サンクトゥス」

カストラート【現在はカウンターテナー】

17世紀のヨーロッパでは、教会では女性が歌う事を許されていませんでした。そのためにソプラノやアルトのパートは声変わり前の少年が歌っていましたが、その変声期を人為的に避け、きれいなボーイソプラノの声を維持できるようにと、変声期を迎える前に去勢をして、成人しても高く透明憾のある声で歌い続ける風習がありました。その声を持つ人は「カストラート」と呼ばれていました。カストラートの語源自体が「去勢する」という意味です。

カストーラートは、教会という場所を離れてもオペラでも重用され、ピーク時には1年に4000人以上の少年がカストラートを志して去勢したという記録も残っています。
しかしそのような身体的に大きな代償を与える手術をしても、当時の医療では感染症にかかり命を落としたり、もともとの音楽的資質がなかったりで、実際にカストラートになれた人は多くなかったようです。

自分の性や命を賭してでも求めた透き通った歌声は、少年のような清らかさと成熟した大人の表現力が合わさり、人々を魅了しました。

現在は、人道的な理由で身体的に本物の「カストラート」は存在しませんが、技術によって「カストラート」の歌声を継承する人は「カウンターテナー」と呼ばれ、オペラなどの世界で活躍しています。女性の高音域とも少年の声とも異なる、独特な透明感と深みを持っています。

歴史上最後に記録されたカストラートは1922年に亡くなったアレッサンドロ・モレスキで、録音も遺されています。
古い録音であり、録音時期も全盛期ではなく高齢になってからの録音なので音質が鮮明ではありませんが、清らかさと「カストラート」という悲しみを背負った奇跡の歌声をぜひ体感してください。

おすすめ曲:アレッサンドロ・モレスキ【歌】 シューベルト「アヴェ マリア」

手嶌葵

映画『ゲド戦記』のテーマ曲「テルーの歌」や『コクリコ坂から』の主題歌「さよならの夏」など、ジブリ作品で一度耳にしたことがある方も多いかもしれません。

ノスタルジックで透明感のある世界観、そして唯一無二の声質を持つ歌手です。

優しく囁くようなウィスパーボイスでありながら、どこかに力強い生命の息吹を感じさせる。儚くも芯のある歌声は、聴く人の心に静かに染み込みます。

声質に注目しがちですが、彼女は歌詞をとても大切に歌う人です。
一言一言を語り掛けるように、想いを胸に届けてくれます。そんな丁寧な歌い方が、彼女の歌の真価だと思います。

心が洗われる
傷を癒してくれる
背中を押してくれる

受け取る私たちに感じ方の余白を与えてくれる、包容力のある歌声です。
まるで夜の静けさの中に流れるオルゴールの音のように。

おすすめ曲:手嶌葵「明日への手紙」

まとめ

声は、祈りのかたちを変えたもの。
その声を想いと共に受け取ることで、あなたの心が清められますように。

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