ベートーヴェン【生きるとは?重厚で激しい音楽】

クラシック音楽

はじめに

ベートーヴェンの音楽の魅力は「重さ」「激しさ」にあります。
彼の作曲方法は、書きとめたアイディアを何十回も推敲し、長い年月をかけて音と真摯に向き合いながら、1音1音を自分の身を削るようにして作り上げていくものでした。
その音の重厚さは、彼自身の音との向き合い方とも深くかかわっているのかもしれません。

本記事でベートーヴェンの音楽をより深く味わうために、彼の時代背景や作風の特徴について掘り下げていきます。

時代:古典派からロマン派への橋渡し役

ベートーヴェンの時代は、古典派とロマン派のちょうど移行期にあたります。

古典派

バロック音楽の複雑な様式が終焉を迎え、明快な形式美と自然で親しみやすい旋律が特徴の時代です。
器楽楽器の発達から、ソナタ形式や交響曲などの器楽形式が整えられ、音楽の中心は声楽から器楽へと移りました。
ピアノの発展もこの時代に進み、鍵盤楽器の主役はチェンバロからピアノへと移行していきます。

ウィーンを中心に活動したハイドンモーツァルトベートーヴェンの3人は「ウィーン古典派」と呼ばれています。

ロマン派

古典派の形式的な枠組みを保ちつつも、愛や悲しみなどの感情、情熱を自由に表現する曲へと変わっていきました。。
感情表現優先で、和音の使い方も半音階など、不協和音が多く使われるようになります。
作曲家の特性に合わせ、ピアノの小品から壮大な交響曲と音楽スタイルが大きく2極化しました。

ベートーヴェンの役割

ベートーヴェンは、古典派の様式美を極限まで発展させ、完成させ、新しい時代のロマン派の要素も取り入れ、ロマン派への橋渡しの役割もしています。
彼の音楽には、構築的な美しさと情熱的な感情表現が共存しており、のちの時代の作曲家に大きな影響を与えています。

音楽家を取り巻く時代の変化

この時代、音楽家は、宮廷音楽家をしていた時代から商業的に市民に向けて曲を書くようになり、音楽家はフリーで活躍する時代になります。
教会やパトロンに求められる曲を書いていた時代から、自分が本当に書きたい曲を書いていく時代へと変わっていきます。

革新的な曲作り

奇をてらった曲作りはしませんでしたが、曲の構成よりも自分の情熱を優先した曲作りは、結果的に音楽史に革新的な手法として語り継がれています。

ピアノソナタ「熱情」 楽章を区切らない構成

楽章の区切りがあいまいで、第2楽章で曲をいったん終了せずに、そのまま3楽章に突入するという大胆な構成をとっています。
当時としては斬新な試みであり、感情に任せたダイナミックな展開は、形式を重んじる時代において強い印象を残しました。

交響曲第5番「運命」 楽章を越えたモチーフの反復


有名な「ダダダダーン」という、この曲の柱になる旋律(モチーフ)は、全曲を通して、アレンジも含めると210回以上も繰り返すと言われています。
各楽章でそれぞれ曲調が変わる本来の曲の構成とは異なり、各楽章それぞれ曲調は変化しながら、共通のモチーフを貫くことで「運命はこのように扉を叩く」という全体のテーマが一貫して感じられる構成、交響曲全体の一体感や重厚感をさらに引き立てています。

交響曲第9番 前例のない長大さと合唱の導入

交響曲は本来、第3楽章で終わる従来の構成や30~40分程度の演奏時間とは異なり、4楽章で構成され、第4楽章を含めると演奏時間も1時間近くに及びます。当時の交響曲としては異例の長さでした。

また、第4楽章のクライマックスでは、「歓喜の歌」という大合唱が加わります。交響曲に声楽を導入するという前例のない手法によって、音楽と文学的メッセージ性の結びつきを一層強め、、壮大な作品へと昇華させました。

自由な楽章の数

ベートーヴェンは常に形式に縛られず、作品ごとに最適な構成を選んでいたので、交響曲ごとに楽章の数が違います。
本来、第3楽章で構成される交響曲ですが、ベートーヴェンの作品には4楽章構成が多く、交響曲第6番「田園」は、5楽章構成となっています。

徐々にに失われていく聴覚と音楽の変化

時代背景や革新的な技法と並んで、ベートーヴェンの創作を語るうえで欠かせないのが、彼自身の「聴力の喪失」という極限的な状況です。

ベートーヴェンは、20代後半から徐々に耳が聴こえなくなるという症状を抱え、それが徐々に進行していきました。やがてほとんど聴こえなくなってもなお、彼は曲を書き続けたといいます。
作曲家にとって絶望的な試練の中でなお、創作意欲が途切れることなく、彼の作る曲は本来持つ激情に加え、晩年は祈りを感じさせる音楽に昇華していきました。
このような作品群を遺したことは、が音楽史に刻まれる大きな功績といえるでしょう。

彼にとって、「生きること」はすなわち「音楽」であったのではないでしょうか?
ベートーヴェンの音楽から伝わるドラマチックさや音の重さは、想像をはるかに超える苦悩と音への渇望が込められているように感じられます。

後世に続く作曲家や演奏家に彼の精神は受け継がれ、今も生き続けています。

まとめ

音楽も人生も、まさにドラマチックだったベートーヴェン。
その創作の背景を知ることで、彼の作品がより深く心に響いてきます。

次回は、彼のおすすめの作品や曲の魅力をご紹介します。

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