音楽はどこから生まれたか?【祈りと音楽】

音楽エッセイ

はじめに

今、私たちが暮らしている日常には、いたるところに音楽が散りばめられています。
悲しみも喜びも伝えられる表現力、ピアノやヴァイオリン、管楽器、打楽器の幅広い楽器の存在。

人類の起源を考えるように、この複雑で美しい「音楽」と言うものが、どこから生まれたのかを考える時があります。

さあ、一緒に音楽の起源を探しに行きましょう。

 日本での音楽の起源

日本では古くは縄文時代の遺跡の中から、土笛石笛のようなものが見つかっています。
まだ原始的なコミュニケーションしかなかった頃から、音楽と言う概念はあったのです。
ただ、この笛を使っての音楽は、娯楽や音を楽しむというものではなく、祭祀(祭り)に使われていたようです。神や祖先との対話神事における合図自然崇拝に基づいた呪術的な儀式に用いられたのではと推測されます。

その後、アジア大陸から伝来した歌舞が、それが日本古来の歌舞に融合し、1200年前からは「雅楽」という「舞」と「器楽」の融合した音楽が誕生しました。

「雅楽」とは神事や祭礼で神様を慰め、平和を祈るために舞と音楽を神様に捧げるものです。
笙や篳篥(ひちりき)など、西洋楽器にはない響きの楽器が使われているのも特徴です。

また、「雅楽」と似たものに「神楽」があります。「雅楽」が宮内庁付きの狭い範囲の祭祀であるのに対し、神楽は地方の神社で舞と囃子で豊作を願ったり、厄を払ったり、雨乞いをしたりと神様を招き、慰め、楽しませます。

ヨーロッパでの音楽の起源

ヨーロッパの音楽では、クラシック音楽の起源と言われるところから辿ることが出来ます。それはグレゴリオ聖歌と言われています。

グレゴリオ聖歌は、現在は使われていない「ラテン語」の歌詞で書かれており、6世紀から7世紀にかけての古代ローマ時代の、神に祈る賛美歌として作られました。

旋律も美しく、現代と同じ系譜の音楽のように感じますが、まだこの頃は5線譜は用いられておらず、口伝えで伝承されていましたが、9世紀に「ネウマ譜」という記譜法が生まれ、現在にも文献として遺すことが出来ています。このネウマ譜は、後の5線譜への発展の礎になっています。

この神を称える賛美歌はヨーロッパ全土に広がりましたが、市民の熱狂によって広がっていったのではなく、当時のローマ皇帝の政治的思惑にあったようです。
ヨーロッパには当時、口伝によって地域によって他の聖歌(ベネヴェント聖歌、モザラべ聖歌など)も存在しましたが、宗教的な統一のために教皇命令で「礼拝ではグレゴリオ聖歌を用いなければならない」と定め、グレゴリオ聖歌以外の聖歌は禁止され、弾圧されて後世には遺ることはありませんでした。

その系譜からバロック音楽という教会音楽が確立し、ヨーロッパの安定したクラシック音楽の歴史へと紡がれていきました。

アフリカでの音楽の起源

アフリカ音楽のルーツは、数千年前に遡ります。自然信仰や呪術のようなものが始まりの様です。

ヨーロッパがバロックやクラシック音楽を中心に、旋律や和声を重視して発展をしていたのとは対照的に、アフリカでは大地のリズム黒人の奴隷制度などの悲しい背景を背負った、アフリカだからこそのバックボーンを持った音楽の発展がされていきます。

古来からあるアフリカ音楽の主体は、音楽を奏でる楽器ではなく、リズムを刻む打楽器です。
打楽器は、大地や自然と対話をするのに大切な役割を果たしていました。アフリカの音楽には、クラシック音楽の整えられた規則的な拍とは異なり、「ポリリズム」という、異なるリズムを同時に重ねる独特なリズムがあります。これは心臓の鼓動(3拍子)と足のステップ(2拍子)の組み合わせとも言われています。
アフリカの人たちには呼吸することと同じくらい自然な形で、体内に大地と呼応するリズム感が宿っているようです。

アフリカ音楽の代表的な打楽器に

ジャンベ(膝で抱えて両手でたたく太鼓)
バラフォン(木琴)
アサラト(2つの木の実を紐でつないだ、マラカスとカスタネットを合わせたようなリズム楽器)

があります。

また、アフリカルーツの音楽には、ジャズブルースなどがありますが、これらの音楽は、悲劇的な背景から誕生しています。
奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられたアフリカ人が、過酷な労働環境の中、自分を鼓舞するように歌っていた歌が、ジャズやブルースのルーツとなっています。それは魂の叫びであり、痛みの昇華でした。

アフリカの大地と呼応するリズム感と差別への悲しみが、後世の人の魂を揺さぶるような音楽の誕生となったのです。

音楽と祈り

このように地球上の様々な場所で、文明的な生活をする以前から、自然発生的に音楽は生まれていました。

人は、自然や神の存在に敬意を払い、自然や神と対話をしようと音楽を媒介していたのです。
はじめは歌から始まり、そして木を切り、動物の皮を使用して楽器を作ります。そこでリズムが生まれ、音階が生まれます。

何故音楽が生まれたのか?

この答えは、
「祈りを届けたかったから」「自然や神と対話をしたかったから」

私はそう思います。

あなたも、人生の答えが欲しい時、自然や見えない存在とつながりたい時、音楽の力を信じてみてください。

音楽という祈りの声が、あなたのことをきっと導いてくれるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました