小説

ショートショート

偽善者

私は偽善者だ。常に、心ではなく、頭で考えて行動している。どう動けば、良い人間に思われるか?感謝され、尊敬されるか…。私の策略は、すべて計算通りに進み、今はノーベル平和賞の授賞式の壇上にいる。何十年もこの生き方をしていて、気づいたことがある。...
ショートショート

パイオニア

マラソンを見る時、「あぁ、最初に前に出てしまったか。後半のラストスパートで、抜かれるんだろうな」とハラハラしてしまう。長距離走では、前を走ることが、他の選手の向かい風も引き受け、後ろに続く者たちに通りやすい道程を作ってしまう。そして、ここぞ...
ショートショート

勝手にカップヌードル

夜食は、カップヌードルと決めている。3分の砂時計をセットし、その時間だけ、悩んだり、今日の反省をしていいことにした。もともとは、クヨクヨしたり、物事を悪い方に考えやすい性分である。3分悩んで、カップヌードルを食べて、「今日の悩む時間はおしま...
ショートショート

女性差別

難しい時代になったものだ。深呼吸をしてから、電車に乗る。「おはよう。ちょっと顔色が悪いようだけど、大丈夫かい?」「女性に外見の指摘をするなんて失礼な。差別ですよ」「…あぁ、失礼」「台車運ぶの、手伝うよ」「それって、女性の私の方が非力だってい...
ショートショート

雀の涙

知り合いに、困っている人がいた。私はその分野に明るかったから、彼のサポートをし、何とか窮地を切り抜けた。「お礼をさせてください」という彼に、「好きでやったんですからお構いなく」と返答したが、彼は「そんなこと言わないで受け取ってください。あな...
ショートショート

猿も木から落ちる

私は、朝からずっと動物園の猿山を観察していた。「猿も木から落ちる」かどうかを確認するためだ。結果は、落ちるというより、後ろから押されたり、威嚇されたり、普通に落ちていた。ただ、落ちても皆、痛みを引きずる様子はなく、すぐにまた木に登っていた。...
ショートショート

七五三

2080年。日本は少子高齢化問題に直面していた。若者が圧倒的に足りなく、二十歳以降の成人が社会を支える構造が崩壊寸前だった。そこで、七五三の七歳を迎える年に成人とみなす式典を行い、七歳から働き手として社会に羽ばたくことになったのだ。子どもで...
ショートショート

明日

私は、未来から来た科学者だ。タイムマシンを使って、人類滅亡の日の前日にやってきた。私はその日、たまたまタイムトラベル中だったので、偶然生き残ることができた。明日起きる事は隕石の衝突なので、滅亡を止めることは出来ない。私に出来ることは、一人で...
ショートショート

日本語講座上級者コース

丁寧語、尊敬語、謙譲語をマスターした上級者にだけ受講できる講座があった。1日目は、「省略語」。「あーっす。これは何と言っているでしょう?」「明日?」「違います。ありがとうございます、です」生徒はどよめく。「っす。これは?」「?」「おはようご...
ショートショート

理想の彼女

彼女は、僕の理想にぴったりだ。当然のことだ。私が自分の理想に合わせて作り上げた、AI人間だからだ。顔は本当にかわいいから、ずっと見惚れていた。でも、美人は三日で飽きるとは本当で、数日見ているうちに美しさには興味がなくなった。それでも、性格も...