小説

ショートショート

狭き門

「あなたは一度、困っている人に手を貸しませんでしたね」そう言われ、俺は左の門に案内された。左の門は長蛇の列ができ、右の門は、まだ一人も通過していない。経費削減のため、天国の門の審査はかなり厳しくなったようだった。そんな中、「おめでとうござい...
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双子

私と妹は一卵性双生児で、本当に見分けがつかなかった。そして私たち双子は、外見に恵まれていた。美貌と瓜二つな外見で、私たちは幼少期からずっと人目を引き、告白される人生だった。私は、多くの言い寄ってきた男性の中から、最も容姿が良く、賢く、経済的...
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雲の上

僕がパイロットになったのには訳がある。幼いころ、母が亡くなる時、「悲しがらないで。これからはあなたのことを雲の上から見ているからね」と言う言葉を遺していったからだ。それ以来、僕は空を見上げることが多くなり、やがて空を旅する仕事をしよう、とパ...
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箱の中

僕は、ある日家に人がバタバタと入ってきたと思ったら、後ろから押され、この箱に閉じ込められた。かろうじて食事が投げ入れられる隙間だけがあるものの、昼か夜かもわからず、時間の感覚もなくなりそうだ。食事が三回投げ込まれたら「一」と数え、正の字をつ...
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コピーライター

俺はスランプに突入していた。「ありきたりなんだよね」「何か、長くて心にスパンと刺さらないんだよな」依頼先から、こう言われることが続いた。今日もパソコンに長い時間向き合っているが、何も言葉が浮かんでこない。締め切り3分前、納品しない訳にはいか...
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時効

娘が殺されて20年。ついに時効の日が来てしまった。あの日から、娘を守れなかったふがいなさと犯人への怒りは、年月とともに薄まることもなく、今でも犯人が現れたら怒りで殺してしまうかもしれない。時効の朝、「犯人、見つけてあげれなくってごめんね」と...
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井の中の蛙

僕は、田舎の小学校で「神童」と呼ばれていた。皆に尊敬され、学校では「Ⅿの成績を見習え」と話され、近所のおばさんには、「うちの子もⅯくんみたいになってほしいわぁ」と引き合いに出されることが多かった。高校進学の時、「こんなところにくすぶっている...
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同窓会

俺は、パッとしない学生時代を送り、パッとしない就職をし、パッとしない結婚をして、今もまた、相変わらずパッとしない毎日を送っている。そんなある日、中学校の同窓会の案内状が届いた。今、交流のある奴もいないから、これが何かのきっかけになるかな?と...
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走れメロス

セリヌンティウスは激怒した。「走れ、メロス。何を休んでるんだ?」と。勝手に自分を代理の人質として差し出しておきながら、妹の結婚式を楽しんだり、途中で戻るのをやめようとしたり…。普通に戻ってきていたら、日暮れまでかかる距離ではない。ウサギとカ...
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隣のスーパーマン

私はスーパーマンの正体を知っている。私の同僚だ。職場の人皆が、何となく気づいている。いつ呼ばれても大丈夫なように、通勤バッグにスーパーマンの服を入れて持ち歩いており、書類を出す時に時々見えているからだ。スーパーマンを呼ぶ声が聞こえると、彼は...