小説

ショートショート

リピート

朝、目を覚ますとカレンダーを見る。4月15日。(また戻ってる)この朝を、もう何十回も繰り返している。(何故、先に進まない?)私は、思いながらも階段を降りる。「おはよう」お弁当を作りながら、母が私に声をかける。これもまた同じ繰り返しだ。母が言...
ショートショート

トンビが鷹を生む

少年は苦悩していた。(これが僕の限界なんだ、わかってくれ)トンビが鷹を生む。これは、珍しくないと少年は感じていた。自分の生い立ちに悔いて、子供の教育に力を入れてくれる。親も、自分の子どもなのに、という認識があるから、親を少しでも抜くと、「う...
ショートショート

蜘蛛の糸

俺は、多くの罪を犯してきた。地獄に落ちても仕方のないような男だ。ある日、空腹でふと空を見上げると、そこに一本の細い糸が空から降りてきていた。「もしかして、これがあの有名な蜘蛛の糸か?」そういえば、俺も以前に一度、逃走中に足元にいる蜘蛛を助け...
ショートショート

し刑

裁判所は、緊張に包まれていた。「判決は、し刑」(まだわからない。どっちだ?)被告人は、祈る思いで画面を見つめる。画面にその文字があらわれると、傍聴席の遺族は狂喜し、被告人はガタガタと震えはじめた。「娘がどんな気持ちだったか、今からたっぷり思...
ショートショート

死刑囚の夜

長い廊下を通り、部屋に通されると、輪になったロープが垂れ下がっている。「嫌だ、やめてくれ」泣き叫び、抵抗する私を両脇から掴み、台に上げられる。床の板が落ち、ロープが首に食い込んでいく。(苦しい、助けてくれ…)目が覚めると、そこは独房だった。...
ショートショート

強迫神経症

今日もコンロの火が気になる。きっかけは、火の消し忘れだった。それから、一日に何度も確認しないと気が済まなくなった。症状はどんどんひどくなり、次は鍵の閉め忘れが気になり、外出先から何度も引き帰さなきゃいけなくなり、仕事にも行けなくなり、外出も...
ショートショート

側近

私の特技は、会話だ。何も、特別なことは言っていない。自分の意見を挟まず、相手が答えを導けるよう、会話で誘導する。結果、私はトップの人物の側近に置かれ、大切な財産も任されるようになった。現場で働き、その地位を狙っていた人には、私の存在は疎まし...
ショートショート

偽善者

私は偽善者だ。常に、心ではなく、頭で考えて行動している。どう動けば、良い人間に思われるか?感謝され、尊敬されるか…。私の策略は、すべて計算通りに進み、今はノーベル平和賞の授賞式の壇上にいる。何十年もこの生き方をしていて、気づいたことがある。...
ショートショート

人口調整法

人口が爆発的に増え、食糧難の問題が深刻になった。そこで、政府は新しい法律を制定した。「人口調整法」子どもを出産する際には、その人数を間引いて調整すること。夫婦は、子供を身籠ると、誰を間引くか夫婦で殺害計画を立て始める。非力で孤独な老人が、タ...
ショートショート

パイオニア

マラソンを見る時、「あぁ、最初に前に出てしまったか。後半のラストスパートで、抜かれるんだろうな」とハラハラしてしまう。長距離走では、前を走ることが、他の選手の向かい風も引き受け、後ろに続く者たちに通りやすい道程を作ってしまう。そして、ここぞ...