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口裂け女

「私、きれい?」「もちろん、おきれいですよ」女はマスクを外し、口を見せる。「私、きれい?」「だから、きれいって言っているじゃないですか。しつこいなぁ」私は、美容外科医だ。毎日、コンプレックスを抱えた女性がたくさん診察に訪れる。大体は、「おき...
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サイトウ

私の苗字は「サイトウ」だ。ありふれた名前の様だが、これほど悩ましい苗字はない。「サイトウ」の字は、85種類もあるという。「漢字ではどう書きますか?」と聞かれるたびに、説明に苦戦する人生を送っている。今日は免許の更新に来ている。窓口で「ワタナ...
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桃を拾ったおばあさん

おじいさんは山へしばかりに。おばあさんは川に洗濯に。山も川も歩いて半日ほどかかり、家に帰ったころにはお腹がペコペコだった。ある日、おばあさんが、川で拾ったという大きな桃を持ち帰ってきた。なんと大きな桃だろう。今晩は久しぶりにお腹いっぱい食べ...
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狭き門

「あなたは一度、困っている人に手を貸しませんでしたね」そう言われ、俺は左の門に案内された。左の門は長蛇の列ができ、右の門は、まだ一人も通過していない。経費削減のため、天国の門の審査はかなり厳しくなったようだった。そんな中、「おめでとうござい...
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双子

私と妹は一卵性双生児で、本当に見分けがつかなかった。そして私たち双子は、外見に恵まれていた。美貌と瓜二つな外見で、私たちは幼少期からずっと人目を引き、告白される人生だった。私は、多くの言い寄ってきた男性の中から、最も容姿が良く、賢く、経済的...
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雲の上

僕がパイロットになったのには訳がある。幼いころ、母が亡くなる時、「悲しがらないで。これからはあなたのことを雲の上から見ているからね」と言う言葉を遺していったからだ。それ以来、僕は空を見上げることが多くなり、やがて空を旅する仕事をしよう、とパ...
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地獄

男は、多くの悪事を働き、地獄へ墜ちてしまった。血の池があり、針の山があり、阿鼻叫喚が響き渡る。そこには鬼が、恐ろしい顔で地獄の者たちをしばいている。その時、どこからか「蛍の光」が聞こえてくる。「もうすぐ閉館になります。また明日のご来場をお待...
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竜宮城への案内

カメは、子供たちに頼んでいた。「私を殴るふりをしてくれないか?そこにひっかかる人がいたら、君たちにも分け前を与えよう」まんまとひっかかった浦島太郎。カメは後ろから子供たちに謝礼を渡し、浦島太郎を竜宮城へ連れて行った。何故かって?それは、ご主...
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竹取物語

かの有名な古典文学「竹取物語」を、改めてちゃんと学ぼうと、私はインターネットで注文した。やっと到着した。心を躍らせて、ビニールの封を開けて読み始める。そこには、竹が取れる名所や、竹を取る人々の物語が展開されていた。(タイトル詐欺じゃないか?...
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箱の中

僕は、ある日家に人がバタバタと入ってきたと思ったら、後ろから押され、この箱に閉じ込められた。かろうじて食事が投げ入れられる隙間だけがあるものの、昼か夜かもわからず、時間の感覚もなくなりそうだ。食事が三回投げ込まれたら「一」と数え、正の字をつ...