ショートショート

トンビが鷹を生む

少年は苦悩していた。(これが僕の限界なんだ、わかってくれ)トンビが鷹を生む。これは、珍しくないと少年は感じていた。自分の生い立ちに悔いて、子供の教育に力を入れてくれる。親も、自分の子どもなのに、という認識があるから、親を少しでも抜くと、「う...
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蜘蛛の糸

俺は、多くの罪を犯してきた。地獄に落ちても仕方のないような男だ。ある日、空腹でふと空を見上げると、そこに一本の細い糸が空から降りてきていた。「もしかして、これがあの有名な蜘蛛の糸か?」そういえば、俺も以前に一度、逃走中に足元にいる蜘蛛を助け...
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し刑

裁判所は、緊張に包まれていた。「判決は、し刑」(まだわからない。どっちだ?)被告人は、祈る思いで画面を見つめる。画面にその文字があらわれると、傍聴席の遺族は狂喜し、被告人はガタガタと震えはじめた。「娘がどんな気持ちだったか、今からたっぷり思...
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ピノキオ

ピノキオに、嘘を鼻が伸びるように魔法をかけようと、杖を振った妖精。しかし、杖を振った方向を間違えてしまい、鼻ではない場所に魔法をかけてしまった。「昨日。こーんな大きな魚を捕まえたんだよ」そう話すと、パンツの中に違和感が…。嘘をつくたびに、彼...
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死刑囚の夜

長い廊下を通り、部屋に通されると、輪になったロープが垂れ下がっている。「嫌だ、やめてくれ」泣き叫び、抵抗する私を両脇から掴み、台に上げられる。床の板が落ち、ロープが首に食い込んでいく。(苦しい、助けてくれ…)目が覚めると、そこは独房だった。...
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強迫神経症

今日もコンロの火が気になる。きっかけは、火の消し忘れだった。それから、一日に何度も確認しないと気が済まなくなった。症状はどんどんひどくなり、次は鍵の閉め忘れが気になり、外出先から何度も引き帰さなきゃいけなくなり、仕事にも行けなくなり、外出も...
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側近

私の特技は、会話だ。何も、特別なことは言っていない。自分の意見を挟まず、相手が答えを導けるよう、会話で誘導する。結果、私はトップの人物の側近に置かれ、大切な財産も任されるようになった。現場で働き、その地位を狙っていた人には、私の存在は疎まし...
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ウルトラマン

はるか300光年先からやってくるウルトラマン。ある日、一人の子どもが尋ねた。「何でそんな遠くから、地球のために来てくれるの?」「それは、近くで仕事がないから仕方なく…」話している最中に、ウルトラマンのランプが点滅し始める。もうすぐ3分になり...
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三途の川

父との別れの時が来た。家族は、棺に遺品を入れ、胸元に三途の川の渡し賃を忍ばせる。火葬前の夜、家族がしんみりとを過ごしている時、棺桶の中の父が起き上がった。驚いて固まっている私たちに、父が言った。「三途の川の渡し賃が、電子マネーに変更になった...
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現代音楽家

私は、新進気鋭の現代音楽家だ。不協和音の多用や変拍子など、独自の作品観が音楽批評家を始め、多くの人たちに評価されていた。新曲の発表公演が近づいてきた。しかし、最近、耳の聴こえがが悪い。ベートーヴェンだって、その状態で作曲していたじゃないかと...